えほんのはなし12「旅する絵本」

12ehon_1.jpg

ねこひさんのえほんのはなし。
雪の降り積もる北海道の大沼より届きました。

12月はクリスマスにぴったりな3冊。

美しい絵本、あたたかい絵本、楽しい絵本。

文 / ねこひ

   ★

12ehon.jpg

『アンデルセン童話集1 雪の女王』エドマンド・デュラック絵、荒俣宏訳、新書館、1993

デュラックの物憂げで美しい挿絵が宝物のように内包されたこの本は
クリスマスに好きな人からもらってみたい一冊です。
ロマンチックなアンデルセンの世界を、なお深く薄暗い魅力に仕上げています。

12ehon_6.jpg

上のカットの風景は、大沼によく似ています。お話の中で、ラップランドのおばあさんが干し鱈(タラ)の保存食を紙代わりにして手紙を書く場面がありましたが、こちらでも、近くの海ではやはり鱈がよく獲れ、冬に海沿いを車で走るとあちこちの家の軒先に干し鱈が下がっているので、とても身近に感じました。

タイトルは有名だけれどもお話は知らないという人が多い「雪の女王」。魔の鏡のかけらが目に入って、物を正しく見ることのできなくなった男の子カイを探しに、あなたも旅しませんか。

12ehon_5.jpg

4話入っているうちの1話「豆つぶの上に寝たお姫様」挿絵。ほんの数ページの短いお話ですが、とても引き込まれます。

 

12ehon_4.jpg

『とんがとぴんがのプレゼント』西内みなみ作、スズキコージ絵、福音館書店、2008
『サンタのたのしいなつやすみ』レイモンド・ブリッグズ作絵、こばやしただお訳、篠崎書林、1976

「とんがとぴんが」は、『ぐるんぱのようちえん』の作者が、その姉妹編として3年後に書いたそうです。当時堀内誠一さんが多忙で、絵は司修さんが手掛け「こどものとも」1968年12月号として出版。
旧版→http://rusuban.ocnk.net/product/7623(高円寺の絵本古書店「るすばんばんするかいしゃ」さんのサイトより)

ハードカバーにはならず幻の作品となっていたところ、2008年スズキコージさんとのコラボレーションで改作され、再び世に出ることになったとのこと。読み終わって、改作の出版を決意してくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

12ehon_3.jpg

なんてふわふわ暖かそうな毛糸!とんがとぴんがはニコラスおじいさんに靴下をプレゼントするため旅に出ます。羊の毛をもらうところからスタートし、季節は春、夏、秋とめぐって...

「つぎにとんがとぴんががやってきたのは けいとつむぎのツムさんのところ。」「ぐるんぱ」ファンに嬉しい聞き覚えのあるフレーズが出て来るなど、うっすら「ぐるんぱ」を感じられ、でも、途中思いがけない展開があったり。靴下を一から作る工程に『ペレのあたらしいふく』を思い出す方もいると思いますが、とんがとぴんがの、ちょっとちゃっかりしてる軽い感じが私は好きです。かつて「ぐるんぱ」の世界を楽しんだ大人や、4-6歳くらいの子におススメ。

もう一冊は『スノーマン』でおなじみの作者による漫画絵本。そういえば、サンタさんって冬以外何してるの?と思うようになった小学生にいかがでしょう。

12ehon_2.jpg

バカンスで思い切り羽を伸ばすことを夢見るサンタさん。現実とのギャップがユーモラスに描かれ、キャンプをしたり足湯をしたり、カジノに行ったりするお茶目なサンタさんの姿にますます親しみがわくかも。あちこちの国のお国柄が描かれ、ちょっと旅をしたような気分になります。

お気に入りの一冊が見つかりましたか。みなさん良いお年をお迎えください。

雪の大沼より
文/ねこひ

 + + +

ねこひ  三月の羊内にある世界一小さな絵本屋

三月の羊 2010年に西荻窪から北海道・大沼へ移住
     現在は通信販売を中心に営業。5-11月は土曜日に店舗販売あり。
     
     041-1353北海道亀田郡七飯町上軍川9-11
     T/F  0138-67-2077
     http://rumlamb.tea-nifty.com/

北海道大沼での暮らしを綴る→大沼ねこひ日記