えほんのはなし10「かえでがおか農場のいちねん・あやとりいととり」

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3月「えほんのはなし」はいちねんの暮らしを見つめる絵本。

ねこひさんより素敵な絵本話が届きました。

 

そして今月から「えほんのはなし」はねこひさんが担当になります。

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『かえでがおか農場のいちねん』

アリス&マーティン・プロベンセン 作、きしだえりこ 訳、ほるぷ出版、1980

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この絵本を開くと、よく整理された心地よい部屋の中にいるような気持ちになります。 
それはプロベンセン夫妻が、景色や暮らしのどんなところが大切か、
動物や自然のどんなところが美しいかをしっかりと捉えているからでしょう。
具象にはない持ち味、抽象化された絵ならではの心地良さです。
 
実際にもニューヨーク郊外の農場で動物たちに囲まれた暮らしをしていた夫妻の描く動物たち。
実物をよく見ている人が抽象化した絵なのでポイントが押さえられ、さらにユーモアと温かい視線が加わって味わい深いものとなっています。
実は、三月の羊の「ひつじ飛び出し注意」の羊を描くとき、この絵本を参考にさせてもらいました。

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夫が好きな「羊」ですが、私はあまり馴染みがなく、たくさんの絵本や写真を見た中で 
プロベンセン夫妻の描く羊が一番すてきに思いました。理由は先に挙げたものでしょう。 
多くの絵本に描かれる動物たちは、ともすればこちらに歩み寄りすぎ、媚びた様子になりがち
ですが、夫妻の描く羊たちは、羊は羊で自由に生きていますよ、という雰囲気。
羊の時間と尊厳が大切にされながら、「何こっち見てるの?」とこちらにちょっと目をやる程度です。

  
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1月から始まる12つきの暮らしを見ていて、最近ひとつ気づいたことがありました。 
大沼で暮らしながら、自然の中で暮らすってどういうことなんだろう、とずっと考え続けてきたのですが、
この絵本を読み返しながらはっとしたのです。それは、1年というサイクルの中に生きる、ということでした。
言葉にするとごく当たり前のことです。でも、東京での1年とはまるで違ったのです。 
それは、既にそこにある自然のサイクルの中に、自分がすぽっと入るという感覚です。 
 
それは、少しばかり窮屈なものです。
なぜなら、いつでも自分勝手にやるわけにはいかないからです。
東京にいるとき、私はいつでも自分がやりたいように生きてきた気がします。
もちろん都会にいても、梅の花が咲いたとか、沈丁花が香ってきたとか、季節を感じ愛でることはあります。
けれど、その自然に自分が揺さぶられることは少なく、あくまで味わう程度でした。
 
大沼での暮らしは違います。全く自然の流れを無視できません。
自然が中心で、私はほんとうに小さく弱く何もできない存在であると思い知らされます。 
自分の思い通りにはならないことばかりです。
植物や動物たちがどう生きているかが、とても参考になります。
メリハリのある四季に乗り遅れないように、大縄跳びを跳ぶような気持ちで過ごしています。
 
初めはあたふたと跳びそこなっていた大繩も、慣れてくると次の波がわかり、瞑想状態のようになります。
サイクルに乗っている体の感じは、とても気持ちのいいものです。
単に景色がきれいというだけでない、のびのび過ごせるだけとも違う、何か少しの不自由さを持った
田舎暮らしの秘密が、この絵本を通じてわかったような気がします。
「12月はさっさとねるきせつです。ふゆはだれでもはやくねます。」
以前読んだときには読み流していたこの文章が、今は妙にしみてくるのです。
 

かえでがおか農場のいちねん

●セットでおススメ
みみずくと3びきのこねこ―かえでがおか農場シリーズ』『かえでがおか農場のなかまたち 』作者、出版社同じ
   

●おまけの一冊 『あやとり いととり』

さいとうたま 採取・文、つじむらますろう 絵、福音館書店、1982

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6時間乗る電車の旅のおともに、あやとりを持っていったことがありました。興味しんしんの息子、そこまでは成功。
ところが、私が思い出せるのはほうきだけ...だめだこりゃ。慌ててキヨスクで漫画を買い足しました。
その後本屋さんであやとりの本を探したものの、わかりやすいものがなかなか見つかりませんでした。
これは実家から持ち帰った、私が小さい頃親しんだ絵本です。

 
まず何より、開いて置いておけることがすばらしい!あやとりしながらいちいち何かで抑えておくなんて大変です。
次に、とにかく見やすい。図が大きいし、手は薄いインク、糸は濃淡のあるカラーで印刷してあり、
地味だけどとても工夫されている本だと思います。
 

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最初の2-3を一緒にやると、5歳(最近6歳)の息子はすぐにどんどん一人で出来るようになっていきました。
数あるあやとりの本ですが、これ以上の本は見かけません。
ひとり用の簡単なものから始まり、3巻にはふたりあやとりや手品まででてきます。

あやとりいととり 1―親子であそぶあやとり絵本

(文/ねこひ)

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ねこひ  三月の羊内にある世界一小さな絵本屋

三月の羊 2010年に西荻窪から北海道・大沼へ移住
     現在は通信販売を中心に営業。5-11月は土曜日に店舗販売あり。
     
     041-1353北海道亀田郡七飯町上軍川9-11
     T/F  0138-67-2077
     http://rumlamb.tea-nifty.com/

北海道大沼での暮らしを綴る→大沼ねこひ日記