今月は冬の絵本を2冊お届けします。
1冊目はイヌイットの女性の聞き語りと、
刺繍絵で綴られた暮らしの様子が描かれた『極北のおもいで』。
2冊目は飛び出るしかけ絵本が楽しい『10ぴきのペンギンくん』。
12月は ねこひ店長の「えほんのはなし」です。
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『極北のおもいで』
ノルミー・エコーミャク作、リブロポート、1990年(品切れ重版未定、中古で入手可)
ロシアの太鼓の音を聞いて、居ても立ってもいられなくなる。
博物館で北方民族の民族衣装にみとれて動けなくなる。
アリューシャン列島の昔をモチーフにした物語にひどく惹き付けられる。
理由はわからないけれど、確かに何か自分の中にある北方民族の種なのだろう。
この絵本を開いた時もまた、なぜだかわからないドキドキ感に満ちた。
イヌイットの女性の聞き語りと、刺繍絵で綴られた暮らしの様子。
冬じゅう雪でできたイグルーの中ですごし、釣った魚は外に干して凍らせる。
かつては憧れの、今は同じ北国の人間として身近になったイヌイットの暮らしぶりを垣間みる。
暮らしの全てに祈りを感じるところはアイヌと同じ。
フクロウの精霊や人魚と暮らす人々に思いを馳せる。
作者はすでに都会におり、ここに描かれたシーンは思い出の中のもの。
でも、だからこそくっきりと鮮やかにスピリットが描かれているのだろう。
今は寄る辺ない民族。けれども根っこにある生活基盤や祈りが、作者の一生を支え、
どこにいても自分はイヌイットであるという深い誇りを感じる。
悲しみはまるで寒い寒い土地に降る新雪のようにドライである。
『10ぴきのペンギンくん』
ジャン=リュック・フロマンタル/文 ジョエル・ジョリヴェ/絵、 学研、2011(しかけ絵本)
氷の上に暮らす10ぴきのペンギンくんたちが、わけあって一匹ずついなくなっていく。
ちょっとシュールで、でもユーモラス。
しかけもよく出来ていて、4歳くらいの子から遊べそうだ。
しかけ絵本というと、しかけばかり凝っていてストーリーがいまいちだったり、
内容がほとんどない物が多いのだけど、この本はお話もよくできていてしかけも面白い。
子どもと一緒に読みながら、9匹、8匹、7匹と減っていくペンギンくん...
1匹の次はどうなっちゃうの?と大人でもはらはら。何度読んでも楽しめる。
シンプルな色の構成と、とぼけた顔のペンギンくんたちがたまらない。
贈り物にも、読み聞かせにも向いている。
「4ひきのペンギンくん ボブスレーにのりはやぶさみたいにすべってくるよ
せまいトンネルとおりぬけたら ペンギンくんはなんびきいるかな?」
って...シュールすぎるでしょ。
(文/ねこひ)
ねこひ 三月の羊内にある世界一小さな絵本屋
三月の羊 2010年に西荻窪から北海道・大沼へ移住
現在は通信販売を中心に営業。5-11月は土曜日に店舗販売あり。
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