Portrait① ハートとハートがつながるお店

Portrait 第1回目は美菜子(みなこ)さんにお話を伺いました

東京・杉並区の西荻窪にあるRED HEART STOREの店長さんです。 

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RED HEART STOREは日本にもファンの多いアメリカのミセスグロスマンステッカーのオフィシャルショップ。

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壁にはロール状のステッカーがずらり!西荻窪では子ども達から「シール屋さん」と呼ばれ親しまれています。 

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インタビューは定休日の月曜でしたが、

美菜子さんは午後からステッカー教室を開くため店舗2階のクラフトルームを準備されていました。

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(左)準備中の美菜子さん(右)クラフトルームに飾られているステッカーアート作品

 

クラフト好きの原点は?

「物心ついた頃から工作やお絵描きが好きだった」

思えば、それはご両親の影響だった と振り返ります。

自宅でピアノ教室を開いていた母。娘の美菜子さんも生徒の一人。ピアノだけではなく歌やお絵描きも教えるお教室でした。

その時に習った絵描き歌は今でも覚えているとか。お菓子作りやお裁縫も得意だった母の背中を見て育ちました。

また、教育学と発達心理学の大学教授であった父が入園をすすめたモンテッソーリ系の幼稚園に通い、そこでは工作やお絵描きの材料がたくさん並んでいて・・「とにかくいつもなにか作ったり描いたりしていた」という楽しい日々でした。

子どもの頃に描いたたくさんの絵は「今でも父が綺麗にとっておいてくれている」と嬉しそうな美菜子さん。

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(左)5才の画集 (右)毎日の絵や手作りの絵本を丁寧に保存

 

はじめての試練と小さな発見。

小さな幼稚園での、のびのびとした日々から一転。小さな美菜子さんの最初の試練。

それは小学校だったようです。幼稚園から環境が変わり、みんなで同じ行動をする小学校に、戸惑い・・どうしたら良いかわからず、自分の席でじっとしている子だったそうです。

でも、3年生の時の担任の先生が自分の書いた作文を読んで、とても褒めてくれた!それは本当に嬉しい出来事で今でも忘れない思い出。書いたり、作ったりする事は私の得意な事なんだ!という発見がきっかけとなり、小さな自信に繋がって、小学校で楽しい時間を過ごせるようになります。

 

大きな転機 アメリカへの引越し

父がアメリカの大学院に通う事となって、思いがけず中学2年生からアメリカへ引越しとなります。

思春期の真っただ中、しかも都会ではない雪の降る田舎町。「日本人」は珍しかったので人種差別もありとても辛い期間だったそうです。

「なんでここへ?」という疑問で、親に反抗もした。「あの頃は本当に辛かった」と思い返します。とはいえ、英語があまり話せないので家族との時間も大事でした。

そして、こんなエピソードも。

今でこそ、アメリカで日本食はポピュラーですが、当時はまだ珍しくなかなか食べることが出来なかった。夜になるとみんなで「お好み焼き食べたいね」「お汁粉食べたいね」と話していました。母はそれを聞いて「出来ないなら、あるもので作ろう!」とあれこれと工夫してあんこを炊いたりお好み焼きを作ってくれたそうです。

  

日本へ帰国 進学と就職

苦労した思春期・・高校を卒業して一足先に日本へ帰国。日本の大学を受験します。

英語は話せるようになった。アメリカでの経験もある。でも、選んだ学科は日本語・日本文化学類という、日本文化を学ぶ学科でした。

「親に反抗してみたり、逆にアメリカ人のような格好をしてピアスをしてみたりもしたけれど、でも、、なにか違う、、と感じていたし、結局自分はそんな自分が好きではなかった。」

アメリカで日本人である自分をはっきりと感じて、生まれ育った日本や日本文化、日本語をもっと知りたいと思ったそうです。

  

そしてミセスグロスマンステッカーとの出会い!

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 ミセスグロスマンステッカーの創設者、グロスマンさん。

  

楽しかった大学時代のあと、就職活動。自分はどこで働きたいのか?

考えてみるとアメリカでの高校時代、進学校だったのでとにかく勉強していた。でも、週末のお買物が唯一の楽しみでカラフルなロールステッカーやスタンプ、シールを買い集めた。「そうだ!自分の好きな物は、雑貨なんだ!」とはっきり気がつきます。

そして、いろいろあたった中、ソニープラザに就職しました。

今では輸入雑貨を扱うお店はたくさんありますが、当時はソニプラに並ぶ商品は珍しいものばかり。それこそ眺めるだけでも楽しいお店でしたね。ここでミセスグロスマンステッカーを知りファンになった方も多かったでしょうか?また、ミセスグロスマンステッカーを扱うフロムハートという専門店もありました。

  

はじめての仕事は山あり谷あり・・苦労しつつ、商品部で偶然、ミセスグロスマンステッカー担当となります。英語を話せる事が役に立ち、デモンストレーションのために来日したグロスマンさんの案内役に!グロスマンさんとの初対面です。

そこで、ステッカーアートの魅力を知ることになります。

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猫のステッカー、籠のステッカー・・そしてリボンのステッカー・・。

グロスマンさんがひとつひとつを重ね合わせて、ひとつの絵が出来上がる様子。

「1+1=2 ではなく、3にも4にもなるのよ」とグロスマンさんは話してくれたそうです。

  

それまでシールだと思っていたものが、重ね合わせ、組み合せる事でひとつの物語が出来上がるステッカーアートに「本当に魅せられました」と美菜子さん。

そして、グロスマンさんの大らかで控えめな人柄にも魅かれ、ミセスグロスマンステッカーがどんどん自分の中で大きな存在になっていきます。

 

※ 参考としてステッカーアートの作品をご紹介。店内に飾られているお客様の作品。

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貼って重ねるステッカーアートでは、まず構成を決める事が大事。 

  

西荻窪にRED HEART STOREをつくる!

結婚や出産、そして子育て・・また会社での状況もだいぶ変わり、人生の大きなの転機がやってきます。

ふたりめのお子さんの育休の頃。今まで通勤で通り過ぎるだけだった西荻窪をよくベビーカーで散歩しながらお買物していたそうです。

小さくても個性的なお店が多い西荻。その姿に(すごくいいな)と感じたそう。そして徐々に(この街でミセスグロスマンステッカーの良さを伝えるお店をやりたい!)と強く思いはじめます。

 

そうはいっても、はいどうぞ!と進んだわけではありません。

まずは、家族を説得するために友人の協力を得ながら企画書を書き・・そしてグロスマンさんにメールで想いを伝えました。ところが、待てど暮らせど返事は来ず、、思い切ってアメリカに電話をしてみると・・グロスマンさんは「あなた本気なの!?」と驚きます。そこで、地元のこの街で小さくてもステッカーアートの魅力を伝えるお店をやりたい、お客様と向き合ってこそ伝わるはず!と 想いをぶつけました。グロスマンさんは、とても共感してくれたそうです。

そして物件探し。いいなと思ってもタイミングが合わず出会いがなかった物件もあってがっかりしていたところに、今お店がある物件と出会い「ここだ!」と確信。その時、壁一面にロールステッカーが並ぶ姿が目に浮かんだのだとか。

 

それがRED HEART STOREのはじまり・・。

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お店の前でグロスマンさんと美菜子さん(2008年5月)

  

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家族との時間

美菜子さんにはふたりのお子さんがいて、明るく元気に学校へ通っています。

そのことを嬉しく思う反面、「小さな頃の自分がその姿をみたら羨ましく思うんじゃないかな」と思う時もあって、子ども達には、仲間に入りたくても入れない子もいることを時折伝え「そういう子には声をかけてあげてほしい」と話したりするそうです。

  

そうそう、働く母として、いつも時間のやりくりは、やはり課題。お店は12時オープンなので、朝早く起きる事で時間をうまく活用!家のことを午前にすませ、夕食の下準備も朝に済ませています。もちろん、バタバタすることもあるけれど、子ども達が大きくなってきた事で色々助かっているそうです。

  

そして、土曜日の夕食は特別なごはん!

いつの日からか夫と子ども達が夜ご飯を作ってくれる習慣がはじまり、(今日はなにかな?)と楽しみにしています^^家族のうれしい食卓ですね。

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夜ご飯の写真をお借りしました^^おいしそう!

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あとがき

こうしてお話を伺ってみると、一生懸命、絵を描いたりなにかを作っている小さな女の子の姿が目に浮かびます。そして、その子が多くの事を学び乗り越えたあと選んだ道がRED HEART STOREなのですね!

 

自分の「好き」を大切に・・。

RED HEART STOREの根底にはそれがあるように思いました。

 

取材の最後に・・「人生をこうして振り返ると、今の自分があるのは両親のお陰なんだなとあらためて思う」とお話していました。「面と向かってはあまり伝えた事がなかったけれどね^^」と。

美菜子さん、すてきなお話、ありがとうございました!!

 

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♡RED HEART STORE →  WEBSITE

営業日/火曜〜土曜12:00〜18:00 定休日/祝・日・月

場所/東京都杉並区西荻南3−21−7−101

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店内には店長美菜子さんの作品やお客様の作品がいっぱい!

参考にしてステッカーを選んでみるのも楽しいですよ^^

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マスキングテープやクラフト雑貨も盛りだくさん!

 

インタビュー/ y u k i