保存食部・その6 冬が来る前に「干し柿づくり」

11_hozontop.jpg季節を通して作るちひろさんの保存食。

今回は、毎年続く干し柿づくりの話。

保存食はただ作るのではなく、

親から子へと引き継がれていく風習ですね。

文 / ちひろ

 
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毎年11月に入ると、奈良の実家では干し柿を仕込みます。
以前紹介させてもらった梅干しの梅と同様、柿は奈良の名産品でもあります。

実家の裏にある柿の木です。
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ちなみに柿の木の右側にある、葉が少し黄色く色づいているのは、父が生まれたときに祖父が植えたという桜の木です。春が来るときれいな花を咲かせてくれます。


干し柿にする柿は、そのまま食べると渋いです。
なので皮をむいて干すわけですが、こんなに渋い柿をどのように食べようか、考え抜いた私たちのご先祖はこれに限らず本当に偉大ですよね。恩恵を受けている私たちは幸せです。


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作業はまず、これらの皮をむくことから始まります。

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ちびっこの応援の下、母と一緒にがんばってむきました。
素手で作業すると、渋で手が黒くなるので手袋をします。

皮は固くて手は痛くなるし、果てしなく続く皮むきはなかなか大変な作業ですが、1人でも話し相手がいてくれると(もちろん手は動かしてます)、時間を忘れて没頭できます。

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とりあえず第一部。これで120個くらい。


続いて、ヘタの部分に紐をかけ、熱湯にくぐらせます。

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人それぞれだということですが、母はいつも30秒くらい熱湯に入れています。熱湯にくぐらせるのは、殺菌のためだということです。

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熱湯に通した柿は1ヵ月前後軒下で干します。
このとき、「柿と柿がくっつかないように吊るす」「雨に濡らさない」など、カビを発生させないための条件があるようですが、実家では1ヵ月間ずっと軒下に吊るしているので、少しは雨に濡れているかもしれません。笑
良くも悪くも、それで十分おいしく出来上がっていると思います。


同じように干しても、柿の熟れ具合、日の当たり方、干した日数によって出来上がりに微妙な差がでる自家製の干し柿。その違いや変化を楽しめるのも、自家製の醍醐味だと思います。最近ではスーパーや直売所でも、柿と干すための紐、説明書がセットになった「干し柿キット」なるものが売られているのを目にすることがあるので、ご興味を持たれた方は一度挑戦なさってみてはいかがでしょうか。


毎年祖母が中心となって行っていた干し柿の仕込み。近年それもなかなか難しくなり、最近は主に母ががんばってくれています。私はいつもお手伝いとして参加していますが、「この柿の木を守りたい」「こどもたちに干し柿の味を覚えていてほしい」という想いもあるので、いつかは私が中心となって干し柿を仕込む日がくるかもしれません。


今年の干し柿、どんな風に仕上がるのかとても楽しみです。

文 / ちひろ