えほんのはなし16「目で楽しむ文字の世界」

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3月。新学期に向けての準備の季節ですね。

今回は文字のえほん。でも「文字を勉強する」というよりも

その美しさやアイデアで字の素晴らしさを感じる絵本を2冊ご紹介。

子どもも大人もわくわくします。

文 / ねこひ

* * *

『あいうえおの本』安野光雅、福音館書店、1976年

何十年ぶりかに手にしたこの本。4歳になった次男が文字に興味を持ちはじめ、今丁度いいのでは、とふと思い出して実家から持ってきました。
思い出した時、木で作られた文字の質感と、ふしぎ絵の混じったいつまでも見ていたくなる絵の印象がくっきり心の中に浮かんできたのです。
4-8歳くらいにどの程度開いたのかわかりませんが、木の質感はすごくリアルな記憶で、他の「あいうえおの本」ではなく、どうしてもこの本を見たいという気持ちに駆られたのでした。 

高崎から帰る長い新幹線の中で再び本を開いた私は、すっかり夢中になりました。
懐かしいからというより、発見が次々に出てきて、子どもの頃には半分も見つけていなかったであろう絵の中の仕掛けを、惚れ惚れしながら読み込む楽しさに取りつかれ、「日本の伝統的な形」を真摯に探す安野さんの姿勢に心打たれ、天才的な筆さばきに心打たれ、7歳の息子と夫と取り合うように見入ってしまったのです。

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「き」は桐、「く」は栗らしい素材で作ってあると気づいたのは夫と一緒に見たからかな。
桜など特徴のある木肌はともかく、タモかな?トチかな?など自分の知識が追い付かないのが歯がゆくなります。
「く」は釘がささっていたり、「け」が削ってあったり、「し」が縛ってあるなどささやかな仕掛けも嬉しい。

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枠絵には身近な草花がふんだんに織り込まれ、日本の風土の豊かさを味あわせてくれる一方で、高さの関係がおかしい歩道橋や写ってるものと違う向きで描かれている鏡の中など必ずちょっと「アレ?」と思うしゃれっ気がきいています。上の写真では、積木の組み方自体もへんてこなのですが、土台の一部が小さな机でできていて、とても想像力を刺激されます。

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巻末に一応の答えが載っているものの、書かれていない仕掛けであふれているこの絵本。
いつまでも見飽きることがありません。
日本に安野さんがいて、本当によかった。
どこか古い自分の源に帰ってゆくような安野さんの絵の世界を見ていると、とても幸せな気持ちになるのです。

 

『アルバートのアルファベット』レスリー・トライオン作、BL出版、1992年

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あひるのアルバートは学校大工。ある朝15時までに校庭にA-Zまでのアルファベットを作って欲しいと校長からの無茶ブリ通達。
「時間があるだろうか」「材料は足りるだろうか」厳しい状況だがやるしかない。
時計とにらめっこして、ストックしていた材料からABCと順に作っていき、Nで早くも材料が底をつくものの... 

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リアルな大工道具と、あるものをやりくりして進んで行くアルバートのアイデアが面白く、最後はあっと驚く展開に。
工法も釘だけでなく木組み、蝶番、くりぬきなどバラエティに富んでいて、本職の大工さんが読んでも楽しめるほどの出来です。
言葉は少なく目で追って絵で見せる本なので、小さな子どもから大人まで幅広く親しめるでしょう。 

(文/ねこひ) 

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ねこひ 三月の羊内にある世界一小さな絵本屋

三月の羊 北海道産小麦粉100%で作る無添加のお菓子とパンの店

2010年西荻窪から北海道・大沼へ移住
通信販売は通年営業 現在春の焼き菓子をご案内中
店舗販売は4月ー11月 火曜・水曜と金曜・土曜

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