えほんのはなし⑥「風が吹く ノラネコぐんだんとピッピ」

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パンをネタにした楽しい絵本は既にたくさんあるかと思いますが、

こんなに子どもと同じ目線で、

はらはらドキドキも楽しませてくれる絵本はあまりないのでは。

 

9月は ねこひ店長の「えほんのはなし」。

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雑誌「子どもMOE」(現在kodomoeと改名)で見かけて以来、ものすごく気になっていたノラネコぐんだん。 
ノラネコがぐんだん!しかもパン工場、です。どれだけ子ども心をくすぐるのー。
 
すぐに図書館で借りると、息子がエンドレスで読み続け、私も久しぶりにわくわくする新刊に出会った!と速攻購入を決めました。絵本好きの私ですが、実は好きなだけに、絵本に対してとても財布の紐が固いのです。

 
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工藤ノリコさんの描くお店は、この本に限らずちょっと懐かしくておいしそうで楽しいものがいっぱい。
「パン屋さん」と聞いてわくわくする気持ちを裏切ることなく、隅々まで丁寧な心配りで描かれています。 しかも無駄な物は一切無し。
 
パン屋さんの仕事をのぞいて、「かんたんだね かんたんだよ ニャーニャー」と自分たちもやってみようと夜しのびこむネコたち。
ちょい悪さんなのですが、このふてぶてしさがたまりません。
日本の絵本にはいい子が多すぎるもの。ふざけたネコたちは、爽やかな風を運んでくれます。

 

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最新刊は『ノラネコぐんだんきしゃぽっぽ』。
こちらも題材は子ども心をしっかり掴む王道でありながら、徹底的にやりたいことやらせてくれて反省はしなくてもまぁよし、でもやることはやってもらいますという今までの日本の絵本であまりみかけなかった哲学が小気味良く描かれています。
優しい絵柄なのにスピード感もあって、これまたはらはらドキドキの一冊です。

工藤さんの公式HPで見られる音付きの予告PVもオススメ(TOPページ2/3くらいの所)
http://www.buch.jp/
 

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「このごろお母さん怒ってばかりいる」と言う息子に、そろそろ読み時かな、と差し出してみた絵本版ピッピもヒット。
ニイマンのカラフルな絵が、リンドグレーンのしっかりした文体とベストマッチで、現代っ子の胸にも確かに届くものがあるようです。
周りに口うるさい大人もおらず、お金も自由になるピッピのことをとてもうらやましそうに、目を輝かせて読んでいました。

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私も隣りに寝っ転がって絵本の中にすっぽり入ると、「楽しいことが何より大切」という子どもの価値観を思い出し、
いつのまにか大人の価値観を一方的に押し付けた物言いが多くなってたかもしれないな、とちょっと反省。
頭にたまった生活のほこりを吹き飛ばしてくれるような絵本たちでした。

文/ねこひ

◎書誌データ
ノラネコぐんだん パンこうじょう 』工藤ノリコ、白泉社、2012
ノラネコぐんだん きしゃぽっぽ 』同上、2014
こんにちは、長くつ下のピッピ 』リンドグレーン作、ニイマン絵、いしいとしこ訳、徳間書店、2004
ピッピ、南の島で大かつやく 』同上、2006
ピッピ、公園でわるものたいじ 』同上、2009

 

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小さな絵本屋「ねこひ」は北海道の大沼にある焼き菓子屋・三月の羊のなかにあります。

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三月の羊

北海道亀田郡七飯町上軍川9−11 

http://rumlamb.tea-nifty.com/

◎通信販売は通年 店舗販売はG.W.ー11月の毎週土曜